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本当に実務に役立つ
プリント配線板のエッチング技術
雀部俊樹、石井正人、秋山政憲、加藤凡典 著
神津邦男 監修
A5判 280頁
定価 2,600円+消費税
ISBN 978-4-526-06266-7 C3054
日刊工業新聞社
2009年5月30日 発行
エッチングと言えば、銅張り板にマジックインキでパターンを書いて液につけてエッチングし、何かの基板をつくった記憶がある人も多いと思う。昔から親しみを持っている言葉ではあるが、今回本書を読んで、エッチングというのは幅広く、かつ、なかなか奥行きも深いものだと再認識した。本書の第1章にも紹介されているが、エッチングはプリント配線板の回路形成は言うに及ばず、リードフレーム、TAB、COFのリード形成などから、ビアホール形成、表面処理やマスク作製など、また、導体材料ではないが、フォトレジストのパターン形成なども含め、実装から半導体にいたるまで非常に多くの加工工程に使用されている主要な技術である。その使い方も、プリント配線板の中だけでも、導体パターン形成、エッチダウン、酸化膜除去、ビア底デスミア、各種表面粗化、シード層除去などなど、精密にものを仕上げるための中心となる重要な技術と言える。
しかしながら、これまでエッチングについての包括的で、かつ、わかりやすい解説書はみあたらなかった。本書は4人の著者がそれぞれの専門分野について、実務的な面から詳細に解説したものであり、技術の理解については当然であるが、実際の現場で必要な事柄に多くのページを割いている。第1章はすでに紹介したが、第2章ではエッチングの性能と効果の評価方法など原理と実地、第3章、第4章では材料である銅に関する内容で、種々の銅の結晶状態と熱処理後の変化や、結晶粒の配向と表面粗化の関係など金属学的な内容、第五章はエッチング液について細線化のための処方から再生方法まで、第6章では装置についてエッチング装置から液の分析装置にいたるまで、生産上の歩留まり改善などの経験から得られたと思われる、装置の構造や調整から構成する材料などが解説されている。第7章はリードフレームのエッチングについて、第8章のトラブルシュートまで、全章が実務的内容で埋められている。
私も開発の現場で、種々のケースのエッチングのデータを必死に見る機会が多かったが、その時、このような本があったらミスを防いだり、余計な回り道をしないですんだと思う内容があちこちにある。本書は、実際にエッチングを担当するエンジニアはもちろんであるが、実装のエンジニアであればだれでも基本知識の一冊として、ぜひ書棚にそろえておきたい本だ。
塚田 裕
アイパックス代表